仙台市「あすと長町」都市再生整備計画について
 
都市情報システム研究所
茶谷 達雄

はじめに
 杜の都仙台は、歴史のまちでもある。伊達政宗公は申すまでもなく、7世紀半ば大化の改新のころ設けられた陸奥国府の郡山官衙(かんが)があったところである。今回、視察対象となった「あすと長町」の地は、まさに、その遺跡がある由緒の地点である。(1)
 近代においては、国鉄の東北三大操車場の一つ長町操車場があり、重要拠点の位置を占めていた。1960年代以降、モータリゼーションが進展し、その影響を受け、貨物における鉄道輸送量が大きく減少し、ヤード(操車場)経由の輸送は全廃された。長町操車場は、昭和59年(1984年)2月1日に機能を停止し今日に至っている。(2)
 「あすと長町」都市再整備計画対象地域は、東京ドームの17.5倍の広さであるが、その約半数はJR東日本の関連用地が占めているところである。
 仙台市は、ここに土地区画整理事業により、多様な都市機能と近隣住宅地が有機的に連携するコンパクトシティのモデル市街地の形成を計画している。(3)

写真1 「あすと長町」の整備状況
写真1 「あすと長町」の整備状況
 1.市民協働による整備計画策定
 (1)公募による整備計画の名称
 整備計画の名称は、公募で「あすと長町」と付けられたとのことである。
 「あすと」とは「明日(あす)」と「US(アス)・英語“わたしたち”の意」をかけ、それに「と(都)・街」をつけたもので、「未来の私達の街」という意味だそうである。21世紀にふさわしい、未来志向の市街地になるようにとの願いが、込められている。
 この長町地区の魅力の一つは、地区内すべてがJR駅や地下鉄駅から、徒歩10分の圏内にあることである。この整備計画への仙台市民の期待の大きさを、窺い知ることができる。
 (2)市民協働の計画づくり
 「あすと長町」まちづくりの計画にあたっては、広く市民や企業からの意見・提案をとり入れ、市民協働による計画策定を行うため、平成12年度(2000年度)に様々な市民から構成される「長町まちづくり検討委員会」を設置した。同委員会では計10回と8回の部会の検討をへて、平成13年(2001年)9月25日に提言を市長に提出した。
 「あすと長町」まちづくり基本計画は、この提言の内容をベースに、まちづくりの指針としてまとめられたものである。

 2.整備計画の概要
 (1)事業のプロフィール
  • ①施工者は、独立行政法人「都市再生機構」で、土地区画整理事業により都市基盤と拠点施設の整備を一体的に推進している。
  • ②対象区域は、約82.0haで、東西約400m、南北約2.3kmの短冊のように平坦で細長い地形。位置は、仙台都心部から南へ5kmのところにある。地区内の西側には、東北新幹線が高架で、一方、JR東北本線等は平面で南北に走り地区を分断している。
  • ③地権者は、JR関連が53.8%、大規模工場等11.2%で、これらで約7割を占めている。
  • ④施行期間は、平成9年(1997年)5月2日より平成28年(2016年)3月31日まで。
  • ⑤事業費は、約1,180億円。
  • ⑥計画人口は、従業員人口12,500人、居住人口12,500人としている。
  • ⑦事業主体は、 事業の特性に応じ都市再生機構、国土交通省、仙台市が役割分担している。
 (2)主な計画事業の概要
  • ①地区のシンボルロード(幅員50m、車線片側3車線)となる幹線道路の整備
  • ②長町駅を中心に高度な業務・商業機能の集積
  • ③JR東北本線の高架化による東西市街地の一体化
  • ④長町駅の移転整備、新駅(地区南部)の設置
  • ⑤市街地形成の先導的な役割を担う大規模集客施設地区の計画等

「あすと長町土地区画整理事業 土地利用計画図」 出所:都市再生機構
「あすと長町土地区画整理事業 土地利用計画図」
出所:都市再生機構

 (3)誘導する都市機能
  • ①都市型・時間消費型アミューズメント機能(文化振興の核づくり)
  • ②商業・サービス業機能
  • ③業務機能(新しい都市型サービス産業の集積等)
  • ④都市型居住機能

 (4)都市景観デザイン
  • ①スカイラインとランドマークの形成
  • ②緑化と環境共生のデザイン
  • ③民間および公共空間の景観デザインの協調化


あとがき
 本稿は、平成19年(2007年)11月8日情報化未来都市構想推進協議会(APADIC)による「あすと長町」都市再生整備計画の状況視察会に参加した所感である。当日は、仙台都市整備事務所のご担当の方から、事前のガイダンスと現地視察のご案内をいただき、ご苦労の一旦を学ぶことができた。
 事業が進行半ばであり、まだ、都市としてコンパクトシティの形態は想定できない状況にあった。現在、道路・交通手段の整備が進行しており、新長町駅・新駅(大師堂)、シンボルロード等道路の一部完成をみているところである。街区の整備も進み、土地の売出しが開始されている。
 今後、都市機能の誘導が円滑にゆき、真の地域に期待されるコンパクトシティの実現が期待されるところである。加えて、長町−利府線断層帯が近くを通っているところであり、災害にも一層の配慮が求められるといえよう。(4)

参考文献
  • (1)「文化財せんだい」仙台市教育委員会文化財課No.86 平成18年10月発行
  • (2)Wikipedia
  • (3)全体として、仙台市ホームページおよび仙台都市整備事務所作成の資料を参照した。
  • (4)地震調査研究推進本部ホームページ




戻る